近代史

スパイ・ゾルゲが見た日本【4】・英国の対日政策

現在では、遠因については諸論があるものの、日本に対するイギリス、オランダ、アメリカの経済封鎖が、直接の引き金となり、日本の第二次世界大戦参戦が決まったということはよく知られていると思う。今日では、ドイツ戦に苦しむイギリスが、アメリカの参戦…

スパイ・ゾルゲが見た日本【3】・日本の工業力

現代の日本の科学力、工業力は、トップのアメリカとは大差がついているが、トップグループに入っているということに異論がある人は少ないと思う。これに対して、戦前の日本について語られる時、飛行機に竹槍で戦おうとするような、非常に貧弱な科学力、工業…

スパイ・ゾルゲが見た日本【2】・農業問題と陸軍

現代から見た場合の、戦前の日本軍にに対する評価は、非常に横暴な集団であり、庶民を迫害していたといった感想が、かなり一般に浸透しているように思う。特に典型的な海軍善玉論、陸軍悪玉論において、陸軍が批判されるような傾向が強いと思う。戦中という…

スパイ・ゾルゲが見た日本【1】・天皇制

今回から4回程度の分量で、ゾルゲの見た日本をテーマに書いてみたい。 ゾルゲとは誰かというのは、このブログに興味を持つくらいの方なら御存知の方も多いと思うが、戦前日本でドイツ人の新聞記者として活動していたが、実態はソ連のスパイであったという人…

欧州人の見た戦前日本の光景【12】・日本人の気質

コリン・ロスの『日中戦争見聞記』について、今回も合わせ12回に渡って書いてきたが、これをもって一旦終了の予定。 日本人の気質として、抜本的な改革を回避し、その場しのぎの対策に終始するのみというような印象は、日本国民自身の多くが自覚しているとこ…

欧州人の見た戦前日本の光景【11】・中国人と日本人の能力

以前の日記で、コリン・ロスの中国人と日本人の器用さに関する所見を取り上げた。 d:id:royalblood:20090513:1242209409 ロスは、日本人よりも、中国人の方が器用さにおいて上であろうと述べていたが、その他の肉体的能力、知的能力についての論評も行ってい…

欧州人の見た戦前日本の光景【10】・日米関係

今回もコリン・ロス関連の話題。 戦前の日本の対米感情に関しては、鬼畜米英等と称して嫌っていたというような印象が強いように思われるが、これは大日本帝国でも末期のことであって、日露戦争の終戦に米国の仲介を仰いだ件などを見ても、本来は、アメリカと…

欧州人の見た戦前日本の光景【9】・街角の光景

江戸時代を観る歴史観に貧農史観というものがある、江戸時代の農民は総じて貧しかった、幕府の桎梏に置かれていたというような前提をもとに歴史を観る態度のことである。戦前という世界を見るにあたっても、貧しく、統制が多い国家だったということが前提に…

欧州人の見た戦前日本の光景【8】・日本人の好戦性

過去の日記で、戦前の日本人の軍事能力の評価について数回書いた。 d:id:royalblood:20090424:1240572977 d:id:royalblood:20090424:1240576100 d:id:royalblood:20090519:1242727669 戦前において、日本は軍事能力については高く評価されていた傾向があるが…

欧州人の見た戦前日本の光景【7】・軍事能力

先の日記で、リデル・ハートや、現代アメリカの軍事学者による、大日本帝国時代の日本軍の評価について書いた。 d:id:royalblood:20090424:1240572977 d:id:royalblood:20090424:1240576100 これらの検討では、明治維新後の近代日本の軍事的成功が、西洋人に…

欧州人の見た戦前日本の光景【6】・日中戦争

開戦以前に様々な要因が戦争に至るものを内包していたとしても、第一次世界大戦が、セルビアにおける銃声で始まったように、日中戦争は、盧溝橋事件の銃声により偶発的に発生した紛争である。日中戦争を日本が軍隊を侵略的に送り込んだために起きたと誤解し…

欧州人の見た戦前日本の光景【5】・満州国

今回もコリン・ロス関連で、満州国について取り上げたい。満州国というのは、満州*1が清帝国を樹立した満州族の故地であったために、清帝国の最後の皇帝、溥儀を擁立して、日本の後援の元に、現在の中国東北部に樹立された国家であった。日本が、このような…

欧州人の見た戦前日本の光景【4】・鉄道運行

日本の鉄道運行は諸外国に比べて正確であるというのは、よく言われてきたことであり、日本国内でも、常識化していることであると思う。こういった点についても、ロスは見解を述べている。 日本の鉄道の管理経営は卓越している。戦時下の非常時にもかかわらず…

欧州人の見た戦前日本の光景【3】・朝鮮

日本が、1910年に朝鮮半島を併合したのは歴史的事実だが、現在の日本国内での議論では、併合は侵略行為であり許されない行為であるという見解と、日本はロシアの南下を食い止めるために自力で近代化する意志がなかった朝鮮半島をやむを得ず併合したのであり…

欧州人の見た戦前日本の光景【2】・日本人の器用さ

今日もコリン・ロス『日中戦争見聞記』関連の話題。 一般に、日本がアジア各国の中で、最も早く工業化に成功したのは、日本人が勤勉で手先が器用であったからというように言われている。私も、このような一般的な見解を受けて、アジア人の中では、日本人が一…

欧州人の見た戦前日本の光景【1】・対独感情

手元にコリン・ロスというドイツ人*1が書いた『日中戦争見聞記』という本がある。1939年、つまり太平洋戦争勃発前夜にして、日中戦争中のアジアの旅行記をまとめたものだが、西洋人の観点から生で見たアジア観は新鮮であった。私が興味深く思った点をいくつ…

シオン賢者の議定書とヒトラー

秘密結社について取り扱っているような、オカルト系の本で、良く取り上げられるものに、シオン賢者の議定書というものがある。これはユダヤ人による世界征服綱領として知られている。ユダヤ人はフリーメーソンや経済力を通じての世界支配を狙っているという…

南京大虐殺について【2】

昨日は、日本人外交官の南京大虐殺に関する回想を取り上げたが、今日は、有名なパル判決書を取り上げたい。このパル判決書は、比較的日本に好意的なものであったと知られており、いわゆる右派の人々も引き合いに出すことが多いものである。 以下は南京大虐殺…

南京大虐殺について【1】

南京大虐殺については、世間的には一応専門家と見られるような人間からも、虐殺などなかったという意見を呈せられることがあるが、この問題については、戦前、日本の外交官であった石射猪太郎が回顧録の中で取り上げているので、同時代人の見聞として紹介し…

政党政治の迷走ぶりは戦前から変わらぬ

今日は、だいぶ時間がとれたので、書棚の肥やしになっていた『頭山満言志録』を読んでみた。漢文や漢文調の文章が多く、漢文力の衰えている身にはつらかったが、それ以外は割とテンポが良かったので、一日で読了できた。 戦前の政府要人の逸話などが載ってお…

リデル・ハートの日本軍評【1】

前の日記で書いた「世界史の名将たち」には、計6人の名将が紹介されていて、この中でアジア人はチンギス・ハーンと、その部将だったスブタイのみが取りあげられている。そういうわけで日本人は、この本には取りあげられていないのだが、チンギス・ハーンと…