欧州人の見た戦前日本の光景【2】・日本人の器用さ

今日もコリン・ロス『日中戦争見聞記』関連の話題。
一般に、日本がアジア各国の中で、最も早く工業化に成功したのは、日本人が勤勉で手先が器用であったからというように言われている。私も、このような一般的な見解を受けて、アジア人の中では、日本人が一番手先が器用であるというように単純に考えていたのだが、『日中戦争見聞記』を読んで多少考え直すところがあった。

もともと中国人は器用な民族であり、おそらく日本人よりも器用であろう。*1

中国人がみすぼらしい工場で簡素な道具を手にして作り出す品物は、目を見張らせるほどすばらしいものがある*2

これらの記述を見ると、コリン・ロスとしては、日本人よりも中国人の方が器用さでは上であると考えていたことがわかる。考えてみると、陶磁器など中国の伝統的な工芸品や書、絵画などは世界的に評価が高いわけだから、本来、中国人が器用さに富む民族であるという点は、見過ごすべきではなかったと思った。
なお、ロスは、そのように器用な中国人が工業化で日本に遅れをとった理由を、日本は、天皇を中心として団結して近代化につとめた反面、中国はそういう姿勢にかけていたからであるとしている。

*1:コリン・ロス 『日中戦争見聞記』 講談社学術文庫 2005年12月1日 P309

*2:コリン・ロス 『日中戦争見聞記』 講談社学術文庫 2005年12月1日 P309