2009-06-01から1ヶ月間の記事一覧

ABCD包囲網考【17】・東條英機の供述

今回は、日米開戦時の首相であった、東條英機の回想を出典にとりたい。東條英機に関しては、回顧録や、日記のようなものは、少なくとも発表されたものとしては存在しないはずだが、東京裁判に際して提出された宣誓供述書が近年出版されている。記述の客観性…

ABCD包囲網考【16】・昭和天皇の回想

歴史家や連合国の政治家の叙述を主にして、ABCD包囲網考を書いてきたが、今回は名目上の開戦責任者であった昭和天皇の回想を取りあげたい。基本的に昭和天皇の日記や手記といったものは、宮内庁が厳重に管理しているため、一般の目が届く範囲に流出すること…

ABCD包囲網考【15】・米戦史家の記述

ABCD包囲網考では、イギリス人の書いたものや所感を取りあげることが多くなっているが、今回はアメリカ人戦史家のサミュエル・エリオット・モリソンの著書を取りあげてみたい。 アメリカが一連の対日経済制裁を行ったという記述の後に、以下のようなくだりが…

ABCD包囲網考【14】・興味深い英国人談話

J.F.C.フラー、リデル・ハート等の英国人は、開戦の責任を必ずしも日本の側だけのものとしておらず、より直接的な引き金は、むしろ連合国側の経済封鎖にあったと述べていたことは過去の日記で既に書いた。 d:id:royalblood:20090609 d:id:royalblood:2009061…

ABCD包囲網考【13】・幣原喜重郎の回想

前日のブログで、フランス領インドシナ進駐に際して、近衛文麿と幣原喜重郎の間で議論があった旨について述べた*1が、今回は、その内容について取りあげたい。 会談の日時は、1941年7月頃のことと思われる。この頃、幣原喜重郎は政権の中枢から離れて在野生…

ABCD包囲網考【12】・フラーの記述

既にフラーの著作では邦訳された『制限戦争指導論』を「ABCD包囲網考」の中でも取りあげているが、彼の著作『The Second World War』は、第二次世界大戦に限定された内容であるため、対日政策について若干詳しく論評している部分がある。邦訳は私の知る限り…

ABCD包囲網考【11】・リデル・ハートの叙述

既に10回に渡り、当事者の断片的な記述や、アメリカの研究者の所見といったものを取りあげてきたが、今回は、このブログでも何度も取りあげているリデル・ハートの『第二次世界大戦』での記述、評価について検討していきたい。なお、筆者は、上村達雄氏訳の…

ABCD包囲網考【10】・米有力研究者の叙述【2】

本日は、ナイ教授の『国際紛争 理論と歴史』に関する検討の続きになる。 アメリカは日本への石油の禁輸措置によって日本の南進を阻止しようとした。「アメリカは日本の首に手綱をかけて,時々締め上げてやる」と,ローズヴェルト大統領は言ったものである。*1 …

ABCD包囲網考【9】・米有力研究者の叙述【1】

今回は、アメリカのジョセフ・S・ナイ氏の太平洋戦争に関する叙述を取りあげたい。ナイ氏はソフトパワー論で有名な、アメリカにおける政治学分野での有力な研究者である。今回参照している『国際紛争 理論と歴史』は、古代から現代に渡る国際紛争の教科書で…

公務員は市民の召使い?

今日、6/4付けのCNN Student Newsのスクリプトを見ていたら、civil servantという表現が出てきた。直訳すると「市民の召使い」となるが、辞書を引いてみると「公務員」という訳だった。日本の公務員も「市民の召使い」であるという自覚を持って欲しいものだ。

ABCD包囲網考【8】・1941年11月頃の英米の予見

ABCD包囲網に関する記述も既に8回目となった。今回もJ.F.C.フラーの『制限戦争指導論』から、関連の記事を紹介する。 11月5日*1、チャーチルはルーズヴェルトに次のような書簡を送った。「日本はいまだ最終的決定を下しておりません。どうも天皇が制止してい…

ABCD包囲網考【7】・英米の共同政策の実態

1941年8月前後の対日政策における、英米の共同姿勢に関しては、J.F.C.フラーが『制限戦争指導論』の中で、簡にして要を得た記述を行っている。今回は、これを出典にとりたい。 1941年8月8日から8月13日に行われた大西洋会談において、チャーチルは次のような…

ABCD包囲網考【6】・グルー大使の日記

既に過去のブログで1941年当時のアメリカ駐日大使ジョセフ・グルーの日記にABCD powersという表現が使われていたということには触れているが、今回は、その件について詳述したい。 今回、紹介するのは、1941年11月29日の日記である。この日の表題は「アメリ…

ABCD包囲網考【5】・オランダとの交渉経過

オランダが対日経済制裁に参加したことは前日取りあげたチャーチルの回顧録のみを見ても明らかだが*1、何故かオランダは日本を経済制裁などしておらず、日本が自主的に取引をしなかっただけであるといったような議論を見かけることがある。例えば以下のよう…

ABCD包囲網考【4】・チャーチルの回顧

以前のブログでも取りあげているが、第二次世界大戦において、ウィンストン・チャーチルは連合国の一国であったイギリスの首相をつとめていた。彼の第二次世界大戦回顧録はノーベル文学者賞を受賞しており、記録文学の傑作とされている。今回は、そのチャー…

ABCD包囲網考【3】・尾崎秀実の論文

前回は、百科事典という二次資料的なものを題材にABCD包囲網について考察したが、今回は、日本人による同時代資料をとりあげようと思う。取り上げるのは、『尾崎秀実時評集』という本に所載されている論文である。尾崎秀実に関しては、過去の日記で既に名前…