欧州人の見た戦前日本の光景【3】・朝鮮
日本が、1910年に朝鮮半島を併合したのは歴史的事実だが、現在の日本国内での議論では、併合は侵略行為であり許されない行為であるという見解と、日本はロシアの南下を食い止めるために自力で近代化する意志がなかった朝鮮半島をやむを得ず併合したのであり、統治中は相当の投資を行い、近代化につくしたというような見解に概ね二分される。コリン・ロスは、朝鮮問題についても見聞し、所感を述べているので、本日もコリン・ロス『日中戦争見聞記』をネタにして、この問題について書いてみたい。
日本人の日韓併合後の態度は非常に過酷であったと述べている。
旧王族は当初は幽閉されていたとしている。なお、別箇所で旧王族に関しては、皇室と姻戚関係にあったことが「発見」されて以降は、皇族としての礼遇がなされるようになったとしている。また、日本では、朝鮮人が強制的に日本本土に連れて来られたような事実は無いと断定する向きもあるが、ロスは、「移住させられた」*3と表現している点は注目に値する。
関東大震災時に、デマが飛び交い、朝鮮人が迫害されたことはよく知られている事実であると思うが、こういった事実は、既に戦前から外国人にも知られていたということがわかる。
ここまでは、日本人は朝鮮半島、朝鮮人に対し過酷な態度をとったという見解を裏付けるものだが、日本が、朝鮮半島の生活水準を向上させた点にも触れられている。
日本人は朝鮮人の生活水準を向上させ、これにより彼らの歓心を得るためのあらゆることを行なった。日本人が多くを成し遂げたことは認めなくてはなるまい。ソウルは「京城」となり、昔のおもかげをとどめていない。市街地をめぐる城壁の大部分は除去され、城門は取り払われ、新しく、大きく、美しく、そして近代的な市街地ができあがった。*5
日本が、朝鮮人の生活水準を向上させ、ソウルを近代的な都市に発展させたということが述べられている。総括すると日本人が、朝鮮人に対して過酷な態度をとったという事実も述べられているが、一方では近代化努力を行った面もあったと読みとれるのではないだろうか。