欧州人の見た戦前日本の光景【7】・軍事能力

先の日記で、リデル・ハートや、現代アメリカの軍事学者による、大日本帝国時代の日本軍の評価について書いた。
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これらの検討では、明治維新後の近代日本の軍事的成功が、西洋人に、かなりの衝撃を与えたということが感じ取れたが、コリン・ロスも、こういった見方を裏付ける記述をしていた。

もし西欧が東亜の歴史に多少なりとも関心を抱いたのであれば、日本が今日大がかりな軍事的成功を収め、第一級の世界的強国になったことにそれほど驚かされなかったであろう。*1

1939年までの日本に対して、大掛かりな軍事的成功を収めた国家であり、1939年現在で第一級の世界的強国とまで評価している。これにより、ロスからも、日本軍の軍事能力は高く評価されていたということが解る。東亜の歴史に関心を抱いたのであればというくだりは、朝鮮出兵あたりを指している可能性もあるが、後段から考えて、モンゴル帝国の歴史を想起すればということではないかと思う。

西欧人も日本人が単に以前から勇敢な国民であったばかりでなく、熟達した戦略、戦術をもつすぐれた軍隊組織を備えていたことを知るべきであった。この間の事情は、蒙古の騎馬軍団が長い間、単に馬に乗った遊牧民の群としか西欧ではみなされなかったのとまったく同様である。*2

また、日本人は勇敢であるだけでなく、戦略・戦術においても優れていると評している。ここでは、ロスはモンゴルを引き合いに出しているが、先にあげたリデル・ハートの論評でも、モンゴルの軍事的成功と日本の軍事的成功が挙げられており、世界帝国を築いた時代のモンゴルと、近代日本を対比させるような論評は、一般的なものだったように思える。

*1:コリン・ロス 『日中戦争見聞記』 講談社学術文庫 2005年12月1日 P90

*2:コリン・ロス 『日中戦争見聞記』 講談社学術文庫 2005年12月1日 P90