シオン賢者の議定書とヒトラー

秘密結社について取り扱っているような、オカルト系の本で、良く取り上げられるものに、シオン賢者の議定書というものがある。これはユダヤ人による世界征服綱領として知られている。ユダヤ人はフリーメーソンや経済力を通じての世界支配を狙っているというのは繰り返し書かれてきたネタであり、少年マガジンの有名な漫画『MMR マガジンミステリー調査班』でも取りあげられていた覚えがある。
ヒトラーの『我が闘争』を読んでいると、こういう典型的なユダヤ陰謀説は、非常に古い歴史があることがわかる。

この民族*1の全存在が、どれほど間断のない嘘に基づいているかということはユダヤ人から徹底的にいやがられている『シオンの賢人の議定書』によっで、常によく示されるのだ。それは偽作であるに違いない、とくり返し「フランクフルター・ツァイトゥング」は世界に向かってうめいているが、これこそそれがほんものであるということのもっともよい証明である。*2

ここにおいて、ユダヤ人側の偽作であるという主張に関わらず、『シオンの賢人の議定書』は本物であるであろうとヒトラーは述べている。

かれら*3はもちろん、真に国民の利益になる経済の基礎をますます根本的に破壊する。かれらは株式という間接的手段で、国民生産の循環過程にしのび込み、これを金で自由になる、より適切にいえば取引が可能となる暴利の対象にしてしまい、そのことによって企業体から個人的な所有権の基礎を取り上げてしまう。このことによってはじめて、雇主と雇人の間に後の政治的階級分裂にまで進む内面的不和が現われる。*4

ユダヤ人は、諸国民の経済的基礎を破壊しようとし、株式による支配を通じて間接的に国民の生活を破壊しようと考えていると述べている。

自分の政治的地位を強めるために、かれらは、差し当ってなおも自分たちにいたるところで制約を加えていた人種的、国家市民的制限を取り除こうと努める。かれらはこの目的に向かって、かれら独自の粘り強さを総動員して宗教的寛容のために闘争する。そして、完全にかれらの所有に帰してしまったフリーメイスン団制度は、かれらの目標を弁護し、また押し通すための主要な道具となる。支配者層も、政治的、経済的ブルジョア階級の上層も、フリーメイスンの意のままに、それとまったく気づきもしないで、彼らの術中に落ち込む。*5

ユダヤ人は、自分たちの政治的地位を強化するため、宗教的寛容を唱えるフリーメーソンを利用して、各国支配者層に食い込んでいくであろうと述べている。
今日のユダヤ人、ユダヤ資本陰謀論は、オカルト色のないものを含め、色々なバージョンがあるが、骨子は『我が闘争』において、既に完成していたことが見て取れる。

*1:ユダヤ人を指す

*2:アドルフ・ヒトラー 『我が闘争 上』 角川文庫 平成20年5月25日 P400

*3:ユダヤ人を指す

*4:アドルフ・ヒトラー 『我が闘争 上』 角川文庫 平成20年5月25日 P409

*5:アドルフ・ヒトラー 『我が闘争 上』 角川文庫 平成20年5月25日 P409-410