欧州人の見た戦前日本の光景【11】・中国人と日本人の能力

以前の日記で、コリン・ロスの中国人と日本人の器用さに関する所見を取り上げた。
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ロスは、日本人よりも、中国人の方が器用さにおいて上であろうと述べていたが、その他の肉体的能力、知的能力についての論評も行っている。
ロスは、日本人から、日本人は中国人よりも、肉体的にも精神的にも劣っていると聞いたことがあるとしており、以下のような見解も述べている。

肉体的に劣っていることは、日本人がとくに背が高く頑丈そうな華北の人間に相対したときはっきりわかる。*1

現今では日本人の体格も向上しているので、今日では、日本人、中国人の体格差は、さほど大きくないのではないかと思われるが、注目するべきところは、下の箇所で知的能力について述べている部分である。

しかし精神的にも一般に中国人は日本人よりすぐれている。このことはまさに現在の中国において十分に観察できる。*2

一般論として、中国人は日本人よりも知的能力について優れていると結論を述べている。また、その上で、以下のような体験を挙げている。

日本人と中国人が一緒に働いているところでは両者は共に相手の言語を習得しようと努める。中国人は日本語を楽に使いこなし、北京の中小企業者などは少なくともすでにある程度の日本語が話せる。、その反面、日本人は苦心惨憺、昼となく夜となく中国語を覚えようと熱心に勉強してもうまくゆかない。同じ経験があらゆる分野でなされており、中国人と日本人に接する人はだれしもこのことがわかる。*3

特に言語習得能力に対して、日本人が非常に習得に苦労している反面、中国人は簡単に外国語を覚えてしまうといった見聞を述べている。私は中国人の言語習得能力については知見がないが、日本人の言語習得能力に関しては、我が身を省みても正鵠を射ているように思えてならない。
更にロスは、以下のように述べている。

中国人は不気味なほど知的な民族である。こうした中国人を単に日本人ばかりではなく、わたしたちヨーロッパ人も凌駕できないであろう。*4

ついには、中国人の不気味な程の知的さは、ヨーロッパ人でも対抗できないと手放しの賞賛をしているのである。
このようなロスの論評が全てにおいて正しいとは言い切れないが、私としては、過去に同僚に中国人を持った時の印象から概ね同意する。彼らは、日本語を、かなり流暢に扱い、英語にもある程度の能力を持っており、職務に対する態度も至って真面目で非常に感心した。聞く話では、工場の勤怠に関しても中国の工場は、東欧諸国あたりの工場と比べて極めて良いらしい。民族内でのレベル差が激しいというような論調もあるが、日本の十倍以上の人口を持ち、日本に比べ、遙かに広い国土と豊富な資源を持っているという点で中国は日本に対して極めて有利であると思う。内部的に統制を保ち続けることができれば、日本が経済力において凌駕される日も遠くないように思っている。
なお、先の稿でも述べたが、このように基本能力が高い民族である中国人を日本人が近代史において出し抜くことができたのは、日本人が天皇を中心に近代的な国家を作ったのに対し、中国人は自己分解に向かっていったからであるとロスは観察している。

*1:コリン・ロス 『日中戦争見聞記』 講談社学術文庫 2005年12月1日 P71

*2:コリン・ロス 『日中戦争見聞記』 講談社学術文庫 2005年12月1日 P70

*3:コリン・ロス 『日中戦争見聞記』 講談社学術文庫 2005年12月1日 P70-71

*4:コリン・ロス 『日中戦争見聞記』 講談社学術文庫 2005年12月1日 P71