真珠湾作戦をめぐる論議【1】

今回は、以前の真珠湾作戦に関する日記を引き継いだ内容。
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真珠湾作戦に関しては、アメリカは完全に察知していたが、戦争遂行上、最も重要な空母を待避させた上であえて攻撃させ、アメリカの第二次世界大戦参戦を容易にしたという陰謀説がある。筆者は過去のブログで述べたとおり、このような立場をとっておらず、アメリカは、真珠湾がターゲットになっている可能性があるというような情報を入手はしていたが、おそらく油断から、完全な奇襲攻撃を許したのであり、空母が出航していたのは偶然であったというように考えている。
しかし、陰謀説に対する反論で賛同しかねる部分がある。それは、第二次世界大戦開始当初は、アメリカをはじめ、世界的に空母の重要性を認識していなかったはずだから、空母のみを待避させるような陰謀を行う根拠が当時はなかったというような内容の反論である。例えば現状のwikipediaの関連記事にもそういう内容が載っている。

戦艦が時代遅れになり、空母が主役になったのは、この真珠湾攻撃がきっかけになったのであり、原因と結果を取り違えた主張であると言わざるを得ない。真珠湾奇襲は大艦巨砲主義時代を終焉させ、航空主兵時代へ移行するという、軍的な一大転換をもたらした大事件であり、陰謀論が正しかったとすれば、アメリカはこの軍事的な一大転換すら事前察知していた事になる。*1

だが、実際には空母の重要性が認識されはじめたのは、意外と古くからであり、公然たる事実として、アメリカも批准した1922年の海軍軍縮条約において、空母は戦艦と並んで、主力艦として制限をされるまでになっていたのである。従って、空母のみを待避させるような陰謀を行う根拠が全然無かったというほど、空母が軽く見られていたということは無いはずである。
この問題に関しては、入手済みの米海軍側の戦史から何か材料が出てきたときに、続きを書く可能性があるので、一応、第一回としておく。

*1:wikipedia:真珠湾攻撃 2009年5月8日 02:21の版